占い師の水晶玉は、いつ何がどこでどれだけ売れるか教えてくれない。


ザ・クリスタルボール エリヤフ・ゴールドラット著 ダイヤモンド社刊

なんだかライトノベルのようなブログタイトルになってしまいました(^_^;)

今回は小売業における在庫管理のお話です。

弊社は主に製造業についてコンサルティングサービスを行っていますが、中小企業診断士として当然小売業についてもある程度の経営知識は持っています。

先日、冒頭の画像の「ザ・クリスタルボール」という本を読みました。

この本は、私が主催している本の紹介イベント「ビブリオバトルinスタートアップくわな」で紹介された本で、以前から読んでみたいと気になっていた本です。

タイトルからは内容がぜんぜん想像できなかったのですが、要は「クリスタルボール」というのは占い師や魔法使いなんかが持っている水晶玉のことで、小売業が抱えている大きな課題として、「いつ何がどこでどれだけ売れるか」を教えてくれるクリスタルボールがあれば在庫などいらなくなるし、最小の投資で最大の利益が得られるということを本書ではテーマにしています。

当然そんなクリスタルボールは存在しないので、じゃあどうやってこの課題を解決しようかというのです。

その課題解決方法を本書では、小説形式で紹介しています。

本書の主人公は、アメリカのホームテキスタイルの小売店店長ポール。

ある時、店舗の倉庫の水道管が破裂してしまい、店舗で持っている在庫のほとんどを一旦、店舗チェーンの地域倉庫に送り返さないといけない自体に直面します。

店舗に残されたわずかな在庫のみで販売機会を逃すことなく店を運営するために奔走する中で、小売業の業界全体を革新してしまうような方法を偶然にも発見して、なんとかその方法を活用できるように周囲の人を巻き込みながら、飛躍的な成長を遂げる物語です。

本書を読んでいて、中小企業診断士試験の1次試験科目・運営管理を思い出しました。

この科目の中でも店舗運営や生産現場の資材調達のやり方で在庫管理について問われていました。

在庫管理において大切なのは「必要なものを必要な時に必要なだけ」という考え方です。

これはトヨタ生産方針のカンバン方式でも掲げている考え方ですね。

はっきり言ってしまえば、在庫というのは無い方がいい。

在庫は管理するだけでもコストがかかります。

いつまでも在庫を抱えていると、新しい商品を入れることもできません。

いつまでも売れない在庫は最終的には廃棄しなければなりません。

しかし、在庫がないとお客さんが買いに来た時に即座に販売することができません。

そうして販売機会を逃すことになり、売上は減っていきます。

じゃあどうするのか?というところから、在庫管理の手法は編み出されてきました。

本書の中では、店舗で売れたものを毎日地域倉庫へ発注することでこの課題を解決しました。

私がこの本を読んだときは、とても当たり前で単純な方法のように感じましたが、まだ今のように物流のインフラも整っていなかった時代ではこれはとても難しく、けど画期的な方法だったようです。

この方法を実現するには、それぞれの店舗の近くに物流拠点を置く必要があります。

そこに大量に在庫をストックしておいて、店舗から発注がきたら即座に店舗へ在庫を送らなければなりません。

しかも発注量は売れた分だけなので、とても少ない数量を頻繁に発送していくことになります。

物流拠点の倉庫でのオペレーションが今度は問題になってきます。

実際にこの物流インフラで成功したのがネット通販最大手のAmazonです。

この物流インフラの整備によって、今のAmazonのような当日発送、翌日配達が可能(日本では運送会社が対応できなくて問題になってますが・・・)になっています。

小売業が多様な消費者ニーズに応えるためには、本書の中にあるように物流や在庫の問題にイノベーションを起こさなければならないのですね。

そして、これは製造業にも言えることで、無駄なものを作らないように、お客様が必要な時に必要なものを必要なだけ作れるような仕組みが欲しい物です。

 

3Dエンタープライズ代表

田中保憲

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